◆前日の晩
元々は泉水谷林道や大ダル林道が存在する奥多摩方面のルートを考えていた。
あちら方面は近いし、なんとなく「へそまん」が食べたくなったからである。
ただ、天気予報を見ていると数日前とは異なって傘マークが開き始めた。
いかん、、、そう思いながら23:00過ぎまで天気予報を気にしていたのだが、
結局、明朝5:00に起きてその時点の天気予報で決めることにした。
◆当日の朝
目覚まし時計が5:00を告げる。
と同時に、強い雨音と雷の音が窓の外から聞こえてきた。
なんとなく気が失せてしまい、天気予報を見るまでもなく二度寝することにした。
そして8:00過ぎ。
コーヒーを飲みながら新聞を読んでいると、鳥の声が外の雰囲気を知らせてくれる。
どうやら雨は上がったらしい。そうなると気分が一新する。
早速、ピンポイント予報でこれから出掛けるにはどの辺りが良さげか検討開始。
世間は梅雨である。
長雨が続く恨めしい季節でもあるが、緑が一層濃くなる時期でもある。
そんな梅雨の合間を縫って林道ツーリングを楽しみたいと思っていたので、
できるなら雨の可能性が低い方面が良い。
場所は決まった。少し前に完抜した上野大滝林道を目指そう。
予報によると、この周辺はどうやら終日曇天となっているみたいである。
そして9:30頃、家族と一緒に出発した。
まずはR299で西に向かう。この道は別名あじさい街道とも呼ばれており、
特にこの時期は彩り豊かな紫陽花が街道沿いに続いていた。
◆金山志賀坂林道
順調にR299を西走して志賀坂峠までやってきた。
峠の志賀坂トンネル直前の左手に金山志賀坂林道の起点がある。
この林道は全面舗装であるが、一度も走ったことがないので今回のルートに選んだ。
入線してほんのしばらくの間は遠くに集落が見えたりしていたが、
進むにつれて周囲は白い雰囲気に包まれ始めた。
R299の走行途中では小鹿野を過ぎた辺りで晴れ間が覗くこともあったが、
今はそんなことは到底期待できそうにない。
かといって、それは残念なものでもない。
林道における霧の世界は下界とは別の切り離した時間を過ごせるので、
私的には貴重なものでもある。
そんな世界を楽しみながら高度を上げていく。
そして八丁峠に到着すると、白い誘惑はいよいよ木々の緑さえも遮るようになった。
勾配を考えるとかなり深い谷のように思えるが谷側の風景は全く何も見えない。
ここまで単色で描かれた世界は久しぶりのような気がする。
ただ、前方の視界は確保されているので進行は大丈夫だ。
目の前には八丁トンネルの入り口が見えてきた。
ここを通過すれば、あとは下りだろう。
・・・と思って進入してみると、、、
なんてことだ、今度は真っ暗な世界である。
車のライトはほとんど役に立たない。車幅がどれだけ余裕があるのかもわからない。
ゆっくり進むが、出口の明かりが見えてこないので不安が大きくなってくる。
それでも、今回は同乗者がいるので良かったが、一人だと辛かったかもしれない。
約800m走るとようやく出口に辿り着いてひと安心。
ここからは一気に下る道である。
ただ、舗装路といいながら陥没も多くてかなり荒れている。
そういえば、志賀坂峠から八丁峠に至る区間もそうであった。
下り続けていると日窒鉱山を中心としたエリアが見えてきたが、
人の気配は感じられず、外灯だけが灯っていたのが逆に廃墟的な印象を受けてしまった。
そうこうしているうちに、雁掛トンネルに差し掛かった。
ここを出たところにある右手に伸びる道が上野大滝林道のはずだ。
◆上野大滝林道
雁掛トンネルを出て、すぐに目指す道はあった。
ただし、林道工事中の看板はあれど上野大滝林道の起点を表す目印は見当たらない。
でも、まず間違いないであろうと判断して入線する。
# 工事中の看板は横に除けられていたので車の進行を妨げるものではなかった。
最初は岩盤沿いに走り、すぐに鬱蒼とした感じの中に入っていく。
鬱蒼なのは曇天のためであって、晴天であれば木漏れ日の雰囲気だったであろう。
中津川林道の起点付近と同じようなイメージであろうか。
トンネルも見えてきた。
色々な表情が展開されて楽しませてくれそうな林道だ。
適度に踏みしめられたダートを感じながら、さらに先へとXJを進めた。
進むにつれて山の上は白っぽく覆われてきた。
ここも霧というか雲というかそんな中に向かって進んでいくことになりそうだ。
緑が深い山というよりは岩肌も露出しており、なかなか面白い雰囲気だ。
紅葉の季節はさらに美しいのではないかと思わせる。
ここの林道はトンネルが多い。
途中で連続する素堀のトンネルにも出会うことが出来た。
それ自体は距離の短いものであるが、周囲の風景に溶け込んで感じの良い存在であった。
# ちなみに上画像のトンネルは手前から万右衛門一号隧道、万右衛門二号隧道である。
進みながら動植物についても気にかけていたが、今回は李(だと思う)が目に留まった。
まだ青くて実が熟すにはもう少し早いようだ。
しばらく川沿いに走っていたが、途中からぐんぐん高度を上げることになる。
それにあわせて、副員もかなり広がってきて安心して走れる。
路面は小石交じりで、ここら辺は明らかに近年整備されてきた感じの雰囲気である。
今回は大滝村(大黒)方面から入線したが、この林道は反対側の奥名郷からも
開削工事がなされてきて少し前につながったルートである。
そういった工事のおかげで今走れている訳である。
また視界には岩盤の上に樹木が生えているような風景が展開され、
峠までの余裕ある幅員と開けた感じがするこの一帯は先ほどまでとは全く異なる表情である。
そして、さらに高度を上げると大きな橋(山吹橋)までやってきた。
林道それも峠付近にこんな立派な橋があるとは驚きだ。
にしても、霧が立ち込めており良い雰囲気だ。
本来なら展望が開けているのかもしれないが、それはまた別の機会に楽しもう。
車を降りてひんやりした空気に触れながら小休憩を取った。
翠雨のおかげで木々の葉は美しく潤っており、艶やかな緑を発色する。
また同じ種類の樹木でも少し距離が離れるとそこには水墨画のような絵が描かれており、
やはり下界とは別の時間が過ぎていることを実感する。
心地良い空間を走っているうちに天丸トンネルに到着。
辺りには広場もあり、ちょっとした公園のような小奇麗な雰囲気が漂っている。
トンネルそのものは2001年10月に開通で真新しい。
またセンターラインで2車線に分かれており、とても深い山間を上って来た場所とは思えない。
トンネルを過ぎるとそこからは下りルートである。
少し先にはダンプが2台ほど止まっていたので、まだ何やら工事が必要なのかもしれない。
さらにそこから先には太尾線との分岐があり、ダンプと思われる深い轍が続いていたので、
太尾線の開削と何やら関係があるのかもしれない。
いずれ確認してみよう。
下りもしばらくは快適な幅広な道である。
既に上野村に入っていると思われるが、景色はさらに白濃くなっていて何も見えない。
この辺りではどんな風景が広がっているのであろうか。
まぁ、今回はこの世界を楽しもう。また来れば良いのだから。
途中から濃い樹木に覆われたダートに変わる。
以前から存在している上野大滝林道の表情である。
分岐では右側に下る道を選んだ。
ほどなくして九十九折の中から奥名郷の集落が見えてきた。
そしてダートも終了。完抜した総距離は約14〜15kmほどであった。
尚、奥名郷の集落にある起点では林道奥名郷線の名前となっていた。
◆小休憩(道の駅 上野)
奥名郷の集落から野栗沢を通り抜けて、R299に合流。
一旦、西に向いて「道の駅 上野」で休憩を取ることにした。
駅舎は小さいがなかなか趣があって良い。
また、土産売り場で気になる缶詰があったので、思わず購入してしまった。
「猪豚の味付け煮(580円)」である。
これは角煮らしいが、他に大和煮バージョンもあった。
まだ開缶していないが楽しみである。
少し休んだ後、R299を東に戻ることにした。
ホントはもう少し先に乙父林道の東沢線と西沢線もあるのだが、
時間の都合でそちらの探索は断念することにした。
時間の都合とは・・・
そう、わらじカツで有名な「安田屋」に寄りたかったのである。
時間は16:00前。今からのんびり向かえば丁度良い時間になりそうだ。
期待を込めて道の駅を後にした。
◆安田屋
その筋では有名な小鹿野にある店である。
ツーリングマップルにも「名物"わらじカツ丼"老舗の店がある」とコメントが載っており、
以前からすごく気になっていた場所である。尚、営業時間は次の通り。
11:00〜13:00、17:00〜18:30(各時間帯ともご飯が無くなり次第、閉店。水曜休)。
ただ、場所がわからないことでも有名である。
じつは往路でR299を志賀坂峠に向かう途中に小鹿野に立ち寄り場所を探していた。
しかし、ネットで紹介されていた詳細な地図を忘れていたため、
やはり見つけることができなかった。
その後、町役場で場所を尋ねて店の前を通過。お昼時で混んでいたようだ。
にしても、細い路地に面した確かにわかりにくい場所であった。
# 小鹿野の中心街を走るR209(R299の南)の一筋南の狭い路地にある。
そして、帰路。時間は17:00ジャストに町営駐車場(安田屋まで1分の距離)に到着。
そのまま店に向かったが、改めて見るととても食堂には見えない佇まいである。
知らなければ普通の民家と思ってしまいそうだ。
店の中では既にお客がわらじカツ丼を食べていた(17:00前でも入店は可能なのか?)。
さっそく席に着いて、味のある手書きのお品書きを見て大盛り2つを注文すると、
なんと先ほど電話注文で6杯作ることになったので、普通盛り2杯分しかご飯が無いらしい。
まぁ、仕方が無い。ここまで来たのだから食べない訳にはいかない。
店を見回すと時代を感じさせるものがあったり、自転車が店の中にも置いてあったり、
なかなかエエ感じである。そろそろ出てくるかなと期待していたら、
ありがたいことに大盛り2杯分のご飯が残ったとのこと。
出てきた丼はフタがカツの上に乗っている感じで盛り上がっていた。
フタを開けると並んだ草鞋を思わせるように2枚のカツがあり、他に具は入っていない。
そのカツはロースともも肉が1枚ずつ使われており、私好みの薄い衣で揚げている。
醤油ベースの味付けはあっさりでありながら食べるほどに深みもあり、
駒ヶ根のソースカツ丼と比べるとより素朴な感じがする。
店の佇まいと併せて私は気に入った。
# 尚、小さい子供が2人いる我が家は大盛り2杯の注文でちょうど良かった。
(安田屋への行き方)
小鹿野町役場から行く場合、小鹿野中の前を通る道を走り、2つ目の信号を右折。
さらに1つ目の狭い路地の四つ角を左折してしばらく走れば店の前を通ることになる。
そのすぐ先に無料の町営駐車場があるのでそこに駐車すれば良い。
◆帰り道
安田屋にて心もお腹も満たされた。
時間は18:00。あとは家に帰るだけだ。
いつも混むR299とR140の交差点もこの日は順調に通過し、正丸峠を上がっていた。
当初はR299をそのまま戻らず正丸峠から奥武蔵グリーンラインを通るつもりであったが、
正丸トンネルに差し掛かったときに強い雨が振り出して暗くなってきたので、
結局R299〜R15とつないで20:00に家に辿り着いた。