◆出発
第5回目となった林道仲間との信州オフ。
今年は夕方現地集合のため、木曽方面に足を伸ばしてから信州入りすることにした。
その前夜はなかなか寝付けなかったので、結局AM2:00頃に布団から出た。
玄関に置いていた荷物を積み込み、目覚めのコーヒーを飲みながらルートを再確認。
そして、AM3:00過ぎに寝ている家族を起こさぬように静かに家を出る。
今回は珍しく高速道路で移動することにした。
岡谷を目指すために中央道の八王子I.Cに向かってR16を走っていると携帯が鳴った。
Sさんである。氏は他の方との待ち合わせで談合坂S.Aに居るらしい。
「お互い気をつけて現地で合いましょう」ということで、こちらは単独行の予定を続ける。
そのうち談合坂S.Aが近づいたので、もしかしたらまだ居るかもと思って立ち寄ったが、
さすがに出発しているようだった。
とりあえず、用を済まして本線に戻ろうとしたとき、また携帯が鳴った。
Sさんである。氏は他の方と待ち合わせていたが諸事情で単独行となったらしい。
「では、ご一緒しましょう」ということで、連絡方法を無線に切り替えて合流することになった。
◆一の沢林道〜高尾山林道
岡谷I.Cを降りて、まずはやまびこ公園方面に進路を取る。
その公園を過ぎた辺りに左に林道の入り口が現れるのだが、
林道起点を示す看板が草木に隠れていて一旦通り過ぎてしまった。
入線すると所々で砂利が敷かれており、緩やかな勾配を下っていく感じで道が続いていたが、
場所によっては左右から枝葉が道を覆いスクラッチ必至の場面もあった。
距離自体は短く、現れた分岐を右に取るとそこからは高尾山林道である。
まだ時間が早いということもあって、朝の光が眩しい。
その光を通して望む遠くの風景に本日の行程が素晴らしいものになると予感した。
路面自体はフラットで走りやすいが、途中にいくつも分岐が現れる。
例えば小野路線に進路を取ればさらに数多くの林道群を楽しむことが出来るようだが、
この周辺の探索はまたの機会に時間を取りたいと思う。
我々は小野峠に向かうため松の大木に囲まれた高尾山林道を進んだ。
◆林道 王城枝垂栗線
小野峠付近に展望台と記された未舗装路がある。
500mほど山を上ると開けた場所があり、左手の小山には錆びた鉄塔が建っていた。
そこからは360度のパノラマが楽しめることができ、
特に諏訪湖が一望できる方向はなかなか印象的な風景であった。
また、この辺りの山は林道名の由縁となっている枝垂れ栗の群生地でもあるようだ。
若いイガは夏に反射して黄緑色に輝いていた。
ちなみに、この開けた場所には王城枝垂栗線の出口がある。
出口と書いたのはここが一方通行となっているからであり、
入線するには一旦舗装路に戻って少し先に進んだところに入り口の標識がある。
尚、入り口脇には舗装工事のため時間制限を設けて進入できない旨の看板があった。
期間ははっきり覚えていないが、7月〜12月頃までだったように思う。
通行止めの時間制限は8:00〜20:00頃であっただろうか(これまた失念)。
いずれにせよ、我々が訪れた時は時間制限が掛かる少し前だったのでそのまま入線した。
入線してまず印象的に思ったのが、道の脇が45度ほどの傾斜になっていることである。
終始このような雰囲気が続いておりロープも張られている。
つまり、茸(松茸?)の山として管理されているのであった。
そうそう、今回はDVDナビを搭載して初めてのツーリングであった。
ここの林道は途中でルートが途切れていたが軌跡を描いてくれるのでなかなか楽しい。
なにより現在地がわかるので深い山中でも場所を確認できるのでありがたい。
そうこうしているうちに道も何も記されてない場所に「日本中心の標」という文字が表示され、
自車はそこに向かって進んでいることが確認できた。
そして入線してから約6km。石碑が建っていた。
東経137度59分36秒、北緯36度00秒47秒、いわゆる「日本のヘソ」である。
日本のヘソは色々な解釈により各地に存在するが、それはまた別の機会に調べてみよう。
ここにも展望台があった。登ってみるとやはり360度のパノラマが展開しており、
山の名前までははっきりわからないが北、中央、南アルプスの山並みが連なっていた。
この地点を過ぎればあとは辰野に向かって下っていくだけだが、
その辰野側からどんどん舗装工事がされてきている。
いずれ観光路線として全面的に舗装されてしまうのだろうか。
眺望もあり雰囲気が良い林道だけにひっそりとした感じを残してもらいたいものだが…
辰野まで降りてきた我々は中山道の宿場町として栄えた「奈良井宿」に進路を取った。
◆木曽路 奈良井宿
R153〜R254〜R19と繋いで、「奈良井宿」までやってきた。
趣ある奈良井駅の横に無料の駐車場があったのでそこに車を停めることにした。
木曽山中の標高900m越えの高所に江戸時代からの宿場町が現存している。
奈良井宿は中山道67宿の1つであり、今では国の伝統的建造物群保存地区に指定されている。
約1kmに渡って古い構えが軒を連ねており、今でも建物の奥から生活の匂いが漂ってくる。
時間は9:30過ぎで、まだ時間に余裕はある。
以前から惹かれていたこの場所をのんびりと散策することにした。
建築様式が不揃いなので建造物だけ眺めて歩いても面白いが、
路地ごとの交点に設けられている水場もこの宿場町の特徴的なものであり、
それぞれに風情を醸し出していた。
舗装されているとはいえ、道が突然直角に折れ曲がっている鍵の手もここには残っているし、
昔の旅人が行き交う様を想像するのは歴史好きな私には楽しい世界である。
旅籠の軒灯に千本格子、そしてくぐり戸といった昔ながらの表情が続く。
このような界隈の中で土産屋も眺めるのも良い。
名産の漆器を扱う店が多かったが、
竹細工の風車や小さいのに表情豊かなかしら人形などの職人芸が印象に残った。
お昼を取るには少し早くて準備中の食事処が多かったが、
たまたま、あいていた越後屋で石臼挽きのざるそばのセットを楽しんだ。
それからは、宿場町をあとにして鳥居峠旧道を越えることにした。
◆鳥居峠旧道
鳥居峠は奈良井宿と薮原宿を結ぶ中山道最大の難所であったらしい。
確かに旅人が歩いて越えるには厳しい場所であることは伺えた。
この道は当時の面影を残しているのだろうか。
そんなことを考えると、なんだか数百年前と変わっていない風景に思えてきた。
こんな感覚も先ほどまで宿場町に身を置いていたからかもしれない。
また、所々に石垣の段が残されおり、さらなる想像を掻き立てる。
奈良井宿から鳥居峠まではカラマツ林を抜ける雰囲気あるフラットダートが続き、
峠に出た瞬間に正面に展望が開ける。思わず笑みがこぼれる瞬間でもある。
ここから薮原宿までも何ヶ所か展望が開けて心地良く走れた。
さぁ、次はR26〜R39と繋いで月夜沢林道を目指そう。
◆月夜沢林道
月夜沢は林道なるものに興味を持ち始めた頃からある意味憧れ的な存在であった道である。
そしてようやくその地に踏み入れることになった。今回は野麦峠側からである。
入り口からすぐ分岐があるが、右側に進路を取る。
(その後もいくつか分岐があったが、どれがどの方向だったかは思い出せない…)
入線してすぐにガレてきた。そしてそんな中を勾配を稼いで進んでいく。
切り通しも多いし、幅員にそれほど余裕があるわけでもない。
崩落の跡らしき場所も数ヶ所見受けられた。
そう、月夜沢林道のイメージそのものを実際に感じながら走ることが出来た。
約7kmのガレた道を登って標高1695m地点に到着。
ようやく月夜沢峠に辿り着いた。
なんて気持ちの良い風が我々を出迎えてくれたのであろう。
下界の暑さが嘘のように別の世界がそこにあった。
もちろん展望に感動を覚えたことは改めて筆舌しなくても良いことである。
峠には月夜沢林道に関する置き看板があった。
その昔、関所を通り抜けることが出来なかった人たちが、
月明かりを頼りに越えたことが、月夜沢峠の由来云々などの話が書かれていた。
ちなみに、Sさんとはこの峠で別れることになった。
あまりの心地良さにベッドを持ち出して昼寝をしていくらしい。
「では、後ほど野営地で」ということで私だけ先に峠を下ることにした。
それにしても空が近い。
背の高い樹木を下から眺めると空に届かんばかりに勢い良くそびえていた。
そして険しい峠越えの中にも優しい緑に取り囲まれるような風景もあり、
一人満足な気分に浸っていたりもした。
開田村側の下りは先ほどまでの道のりとは雰囲気が全然異なる。
フラットで緩やかな勾配の中に水の音が聞こえてくる。
沢沿いの道に変化したようだ。
水の音と山鳥が奏でるBGMを独り占めしながらゆっくりと進んでいき、
沢に降りれそうなところでは期待通りの水の冷たさを感じたりしていた。
ほどなくして舗装路に出たがここからはさらに道の雰囲気が変わり、
直線的な樹木が立ち並ぶ間を通り抜けていった。
約17kmの月夜沢林道を初めて走ったわけであるが、たしかに素晴らしい林道であった。
なかなか来れない場所であるが、是非再訪したい場所である。
◆野営地に向かう前に
月夜沢林道を走り終えて、とりあえず「道の駅 日義木曽駒高原」までやってきた。
トイレだけ済ますつもりであったが、睡魔が襲ってきたので30分ほど仮眠してから出発。
権兵衛峠越えに備えるため、近くのGSに立ち寄ろうとしたとき携帯が鳴った。
Sさんである。氏は月夜沢峠での昼寝を終えてかなり近くまで追いついて来たらしい。
「では、権兵衛峠を一緒に越えましょう」ということで、ここからはまた同行である。
九十九折の権兵衛街道では我々の前を走る車も無かったので快調に進むことが出来て
一気に伊那まで降りてきた。
ここで、コンビに立ち寄って買出しをするが、せっかくここまで来たのだから、
「駒ヶ根まで行ってソースカツ丼を食おう」ということで合意。
# そして、Yさんに電話を掛けて旨そうな場所を聞き出す(ありがとうございました)。
駒ヶ根に向かう前に、一旦、高遠まで行って「さくらの湯」に入ることにした。
林道仲間にはお馴染みの温泉でもある。
のんびりと汗を流して心身ともにさっぱりして、改めて駒ヶ根に進路を取る。
数十分後に「喫茶ガロ」に到着したが、喫茶店でありながらソースカツ丼で有名な店である。
# 店の中は満員で20分ほど待つ。
注文したのは、ミックス丼(エビフライ2本+ひれカツ2枚で1,300円也)。
ほとんどの客がこれを頼んでいたように思うが、目の前に出されると際立った存在である。
エビフライが立って蓋を支えていた。肝心の味はかなり旨い部類に入ると思われる。
しかし、量は多い(^^; 2人とも最後のほうは苦しみながら、とりあえずは完食。
さぁ、今度こそ野営地に向かおう。
◆野営地にて
駒ヶ根から三峰川までやって来たときには時間は20:00頃であった。
ちょっと遅れてしまって申し訳ないと思いつつ走っていたが、
それにしても、R152から野営地ポイント近くまでは立派な道が開通していた。
河原に降りるポイントを進んでいくと漆黒の闇の中に薄明かりが見えてきた。
輪に近づくと、いつもの顔やら懐かしい顔、そしてお初の顔が談笑していた。
我々の到着のあとにも、どんどんメンバーが集まってくる。
なんだかんだといって関東、関西を中心に15台以上は来たのではないだろうか。
このメンバーは実にネタが多岐にわたって豊富である。
一晩だけの野営では語り尽くせない奥深さがある。だから毎年足を運んでしまうのである。
前日、ほぼ寝ていない私は01:30頃に落ちてしまったが、宴はその後も続いた。
翌朝7:00頃、眩しい光に起こされた。本日も良い天気だ。
車内(泊)から出てみると、数人が朝飯の準備をしていた。
頭を覚ますために、辺りを少し散歩する。
昨日は夜の到着だったので、野営地の雰囲気がわからなかったのだが、
三峰川の流れもそれを取り囲む山の風景もいつもと同じで安心した。
地面に目を移すと朝露に濡れた小さな花が目に留まった。
それは朝の光が注ぐ方に向かって背伸びをしていた。
# 普段の生活の中ではきっと気付かないことなんだろうけど…
集まった車はメーカーも車種も様々である。
この集まりの中では車はなんだって良いのである。
改造してようが、純正のままであろうが、そんなことはどうだって良いのである。
車よりもまずは人間ありき。みんな遊びを知っている大人。だから楽しい。
◆黒河内林道
9:00頃、起きている人だけに別れの挨拶をして、Yさんと一緒に野営地をあとにした。
今日一日をどう過ごすかをちゃんと考えていなかったのだが、
とりあえず「道の駅 南アルプスむら」に寄ってクロワッサンを買うことにした。
ここのクロワッサンは何故か美味しいんだよねぇ(ついでに、うめなめたけも購入)。
高嶺線で帰るかどうか迷ったが、結局は水の流れに期待して黒河内林道を選んだ。
ここは2年前に逆ルートで通った約20kmの長距離林道である。
この時間になると日差しは強くて暑かったが、木陰に入るとひんやりして心地良い。
所々でそんな場所を見つけては小休憩を取ったりして進んだ。
緑が彩る世界の中で、落ち着きある主張をしていた薄紫色の花は、
カンパニュラの仲間であろうか。青系の花は涼しさを感じる。
南アルプス林道との分岐を越えてから段々と水の音が近づいてくる。
深い谷沿いの道が渓流沿いの道となり、その音が清涼感を運んできてくれる。
そのような涼めるポイントでは車を停めてしばらく白い飛沫を眺めたりもした。
林道を進んでいくと牛止めのゲートがあった。
ここからは放牧地帯の中を進むことになり、自分で勝手に開閉することになる。
# ちなみに500m先にも同じようなゲートがもう一ヶ所あり。
色々変化があって雰囲気が楽しめる林道である。
路面は全体的に整備されていて非常に走りやすい。
牧場を抜けたあとは入笠山方面側のルートを通って金沢林道に向かった。
◆金沢林道
幾度となく走っている林道であるが、そういやこちらからの下りルートは初めてであった。
しかし、木漏れ日の中の林道という印象は変わらない。
光と影のコントラストを楽しみながらゆっくりと下っていく。
そのうち、新しい展望台ができていた場所に出くわした。
いつも利用していた展望台よりもっと上に位置する場所で山側にそれはある。
下側よりもさらに素晴らしい眺望があるので、なかなか良い感じであった。
そして、時間を確認するとちょうどお昼時。
3年越しの夢を達成すべく「匠亭」に行くことにした。
◆匠亭
鹿料理の店である。場所はR20沿いで金沢林道起点の近くでもある。
看板にあるカレーや刺身の他に唐揚げ、餃子、スモーク、シチューなどがある。
この店の存在は3年前に知り、その時から気にはなっていた。
また、昨年の信州オフの帰りに店の前を通った。
しかし、この時は帰路を急いでいたので立ち寄りを断念。
そしてようやく今年になって初めて訪れることができたのである。
ロッジ風の店構えで、いかにもという雰囲気である。
店の中に入って注文したのは鹿ときのこのカレーセット(コーヒー付きで1,000円也)。
見た目は普通の肉なんだけど、噛んでいると牛や豚とはやはり違う。
かといって、鹿刺しほどの違和感も無い。カレーとしても美味しかった。
ちなみに、この店で出る鹿肉はすべてオーナーが撃ったものらしい。
聞いてみると、猟(11〜2月だったかな?)で仕留めた肉を冷凍保存して出しているとのこと。
念願かなって満足な気分に浸ってしまった私は、
前日からの旅情派活動と合わせてもう充実感で一杯だったので、
麦草峠経由の行程はまたの機会ということで、R20を甲府方面に向かうことにした。
◆帰り道
店を出て、Yさんと別れてそれぞれ反対方向へ進路を取った。
この時、時間は13:00過ぎ。
とりあえず、甲府まで下道を走ってその時の状況で考えることにした。
そして、14:30頃に甲府付近を走っていた。
中央道は若干混み気味だったので、結局いつもの通り秩父越えをすることにした。
夏の日の夕方は空もまだ高い。
時折、予告も無く襲い来る眠気と闘いながら、18:00過ぎに我が家に辿り着いた。
玄関を開けると子供たちが笑顔で出迎えてくれていた。
#コットの上に寝るトドが出るかと思って冷や汗^^;
あ、いまはアザラシ程度にまでスリムになったようです
開田村(合併して現在は木曽町)といえば、そろそろ新蕎麦の時期ですねぇ。
奈良井宿の雰囲気も良かったですし、ん〜旅情派したいです。
そぅ〜。
そうそう、先日乗鞍高原に入るのにわざわざ伊那まで廻って権兵衛トンネル初体験してきました。
あの長い峠越えを考えるとタダで良いのかと思うぐら
い楽でしたよ。
権兵衛トンネルによって伊奈と木曽がかなり近くなったみたいですし、
たしかに完成した価値はありますね。