◆出発
今回は秩父方面を目指す。
きっかけは某四駆雑誌に載っていた「川越〜秩父方面」の記事で、
以前から立ち寄りたい店の情報があると同時に野外に出かけたい気持ちが沸いてきたのだ。
前回走った後に体調を崩してしまい、このままシーズンオフも仕方無しという状況だったが、
なんとか2002年最後の林道ツーリングの時間を作ることが出来て良かった。
そして土曜の朝、時刻は7時前。
直前の天気予報では一日中曇りで気温も低めだったので、フリースを着込んで出発。
◆御岳山林道(東側)
さてと、家を出てきたものの、じつはツーリングのコースは適当にしか考えていなかった。
とりあえず時間を調整しながら適当に走るつもりでいたのである。
まずはR299とR140の交差点に差し掛かったので、本来の目的地とは離れて左折した。
この時点で8:00頃であっただろうか。時間がもう少し早ければ秩父さくら湖を周遊して、
その先の天目山林道の様子を見てみたかったところだが、
起点から2kmほどでゲート閉鎖している可能性が大きいので時間を優先してパスした。
そして、R140をそのまま進んで向かうことにしたのが御岳山林道である。
現在、東側と西側から開削中であるが、そこそこの距離を走れるので興味があった。
しばらくして、r37に入るため右折する。
そこからは少し登れば古池の集落あたりに御岳山林道(東側)の起点が見つかるが、
すぐにダートが顔をのぞかせているので、まず見逃すことはないだろう。
入線して数百mは日陰が続き、路面にはうっすらと霜が浮いていた。
この時期の山々は秋から冬への衣替えで日々を重ねている。
少し前までは鮮やかな配色で賑わっていたであろう木々たちもその葉を落とし、
繊細な枝だけの姿がこれからの季節を象徴するように景色に馴染み始めていた。
カーブミラーに映るXJ。今回も自己満足的な絵を載せているが、
そのうち溜まれば林道ミラーだけの集合ページだけでも作ろうかと思っている。
どっちにしろ、自己満足な世界に変わりは無い。
その先には上に続く道が見えてきた。おのずと期待も膨らんでくる。
フラットな路面を走りながら高度を稼ぐにつれ、遠くの山容を望めるようになってきた。
あの特徴的な尖った頂は武甲山のものであろうか。
さらに高度が上がってくると突然空が開けたルートとなり、
しばらく気分良く走った後、起点から約4kmほどで現時点での終点に辿り着く。
この日も開削中であったので邪魔をしないようにUターンして引き返した。
再び、先程の空が開けたルートを走るわけであるが、
下りのほうが遠くまで稜線が織り成す姿を見ながら走ることができて良い。
それにしても目線の高さに稜線が続く様は何故こんなにも気持ちが良いのだろう。
何気に上を見上げてみると、まだ赤く色づいた葉が残っていた。
季節の忘れ物がこんなところで見つかった。
そのうち明るい空と共に陽射しが強くなり、車内の温度もどんどん上昇してきた。
着込んできたため、窓を全開にして走らないと暑いくらいだった。
かなり冷え込むと思っていただけに、この予想外の展開はありがたい。
御岳山林道(東側)を走り終えて次に大血川林道に向かうことにした。
◆大血川林道
R140から分岐して大血川沿いに走り、奥にある大血川渓流観光釣場から起点が始まる。
その地点までに前大血川林道や奥大血川林道といった起点も見受けられたが、
なんとなく舗装路のピストンの雰囲気があったので今回は先を急いだ。
川の名前は「平将門の乱でここに追い詰められた将門一族の姫君たちが自決して
血が流れた事に由来するらしい」が、その物々しい名前に反して綺麗な流れをたたえ、
イワナやヤマメの生息地として釣り人が訪れる場所となっている。
渓流観光釣場のちょっと先には東谷林道との分岐もあるが、
ここは頑丈なゲートで封鎖されていたので、そのまま大血川林道を進む。
しばらく数kmは川沿いに水の流れを感じながら舗装路が続いていたが、
その流れから離れて大きく右カーブした道を登っていくと、
思いがけない景色が飛び込んできた。見事なパノラマの山景である。
ここは大陽寺の駐車場であるが、他に車も無くしばらく時の流れを楽しんだ。
さて、ここからが大血川林道のダート路である。
平成15年3月25日まで舗装工事中と書かれた看板が立っていたが、
脇に寄せられていたので通行可と判断した。
そもそも、この林道は三峰神社の方面に完抜しているので、
ここを抜けて御岳山林道の西側起点につなごうと思っていたのである。
ダートが始まり、この林道はどんな表情をみせてくれるのかと期待する。
地図で確認すると距離を稼ぎながら勾配を上っていくように思えた。
青い広がりを見せる空と褐色の木々が並ぶ景色とのコントラストは見た目にも美しい。
路面は拳大の石がゴロゴロしている。
決して走りやすいものではないが、これもまた林道の魅力のひとつである。
挙動の中で「ここもいずれ舗装されてしまうのであろうか。」なんて思いながら走った。
そして、ダート開始から約2km。現実に直面した。
重機が機械音を響かせながら舗装作業を行っていたのである。
1.5車線の道を数百mバックで戻ることになり、適当な場所でUターンした。
完抜できなくなったことで予定が狂ってしまったが、焦っても仕方がない。
せっかく晴天のもとで走っている林道だ。今を楽しもう。
そんな風に気持ちを切り替え、道脇で存在感を示している木の下に車を停めた。
枝の先には数枚だけ残った葉が名残りを惜しむかのように揺れていた。
ふと気がつくと枝には新しい生命が芽吹いていた。
そう、次の季節はまたやってくる。
今回は短い距離しか走れなかったが、良い眺望と野趣溢れる林道である。
来年暖かくなったら、また時間を見つけて訪れてみよう。
陽に照らされたススキが最後の輝きを放つ中、ゆっくりと来た道を戻っていった。
◆御岳山林道(西側)
R140まで戻り、西に向かって走ることにした。
御岳山林道(西側)に向かうには三峰を過ぎて岡本のバス停で右折すれば良い。
そして、ほどなく進めば御岳山林道(西側)と大輪林道の分岐がある。
その地点を左折して御岳山林道(西側)に入線するとすぐにダートが始まり、
東側と同様にフラットな路面が続いている。
この先で開削中のトラックなどで踏みしめられている感じだ。
この林道でも太陽の恩恵に授かり、晩秋とは思えないような陽気に包まれる。
結果的に次の日は寒々とした雨模様だっただけに運が良かった。
途中、左手に分岐があった。特に今回は確認するようことはしなかったが、
おそらく大滝村の役場付近から伸びている支線であろう。
しばらく登っていくと、今度は分岐地点にトンネルが見えてきた。普寛トンネルである。
平成14年3月に開通したらしいが、中にはまだ作業道具が色々と置かれていた。
トンネルの先には作業車が色々と止まっており、どうやらこちらも開削中であった。
本線をさらに進む。この辺りから一気に高度を稼いで眺望が開けてきた。
東側に負けず劣らず、こちらもなかなか気持ち良く走れる林道である。
路面に新しい雰囲気が漂ってくると終点は近い。起点から約5kmといったところか。
終点には作業員の方が何人かおられてバックの誘導をしてくれた。
「せっかく登って来てくれたのに、悪いねぇ」なんて声を掛けてくれたが、
とんでもない、作業中のところまで走って来たこちらのほうが申し訳ない。
少し話しを伺ってみると、東側と西側が繋がるにはあと4〜5年は掛かるらしい。
まだ時間は掛かるが、繋がれば15kmほどの距離になるので期待は大きい。
最初の分岐まで戻り、続いて大輪林道に進路を取った。
ここはR140に平行して走っている短い舗装路で特徴的なものはないが、
ちょうどその下のR140は工事片側通行だったので、ちょっとした優越感であった。
そして、再びR140へ。さぁ、本来の目的地へ向かうことにしよう。
◆やなぎや
R299に合流して、秩父の市街地にやってきたのは12:00過ぎ。
林道3本走ってちょうど良い感じで時間調整が出来た。
秩父郵便局の少し先にある駐車場に車を停めた。「やなぎや」である。
秩父方面は蕎麦で有名であり、特にくるみをつゆに使った蕎麦はなかなかの味らしい。
その中でも「やなぎや」は元祖とのこと。
期待して戸をくぐり、「くるみそば普通盛(750円)」を注文した。
注文前は私を入れて2組だった客が、すぐに増えて10テーブルが埋まった。
そして先に注文していた私の席にそばが出されると周囲の目がこちらに集中。
なんだか写真が撮れる雰囲気でなかったが、とりあえず急いで一枚だけ撮った。
つゆの色は写真で見たことがあったが、実際に見るとそばつゆとは思えない。
まずは一気に蕎麦をすすってみた。
微妙にどろっとした濃厚なつゆが蕎麦に絡んで不思議な風味であった。
でも、たしかにこれは経験したことがない味で旨いと思う。
素朴な田舎蕎麦もコシが強くて良かった。
ささやかな目的を達成して満足であった。
帰りはのんびりと晩秋の趣を楽しみながら帰ることにした。
その為、信号を避けるべく選んだ道は奥武蔵グリーンラインである。
◆帰り道
前回訪れた時の奥武蔵グリーンラインはブナ峠から砥石線に下ったため、
途中までしか走っていなかった。
その為、今回はR299〜R140〜r11と繋いでまずは定峯峠を目指すことにした。
この九十九折の峠道では遠くに秩父市街地の景色を楽しむことができた。
定峯峠の茶店に立ち寄った後、白石峠への分岐に繋ぐ。
ここからは舗装林道(奈田良線)になり、後続車も無いのでゆっくり走る。
白石峠は差し詰め林道交差点といったところか。
各方向に伸びている舗装路にはそれぞれ林道の起点が記されている。
今回は奥武蔵1号線に進路を取って大野峠〜刈場坂峠方面を目指すが、
ちょうどここからが奥武蔵グリーンライン(奥武蔵1号線&2号線)でもある。
大野峠を過ぎて刈場坂峠までやってきた。
ここからの眺めは遠くまで見渡すことができてなかなか良い。
晩秋の陽気に誘われてしばらくここで休憩した。
刈場坂峠から東方面が奥武蔵2号線となる。
前回とは逆走であり季節も異なるため、また新たな印象を覚えることができた。
走るたびに違う印象を持つからこそ、旅情派を続けることができるのである。
自然が作り出す冬木立のトンネルが心地良い。その間から見える青空も美しい。
エンジンを切れば木々の内緒話が聞こえてきそうなくらいに空気も澄んでいる。
すれ違う車も無く、一人だけの世界を心ゆくまで楽しむことができた。
と同時に、今年最後の林道ツーリングが終わる時間が近づいてきたことも実感。
そして、最後の休憩のために車を停めた。
さぁ、この後は現実に戻って家族の元へ帰ろう。
足元では秋を彩っていた葉たちが静かに季節を物語っていた。