◆名栗方面へ
四月最初の土曜日はとても素晴らしい朝だった。
窓を開けると早朝特有の輝きと共に春の匂いが部屋の中に入ってくる。
子供たちとは遊具施設のある公園に行く約束をしていたが、
せっかく恵まれた天気に早起きしたので、午前中は一緒に林道まで足を伸ばすことにした。
目指すのは林道大名栗線。我が家から1時間程で到着できる山岳系の林道だ。
いつもはR299を利用することが多いが、今回はr70を走ってみることにした。
ここ最近、ネット上では各地の春情報が寄せられ、淡く麗しい写真も投稿されている。
それらを拝見して心地良い気分が得られると同時に羨ましくもあったのだが、
名栗村への道中ではツツジや見頃を迎えた桜並木が続き、笑みのこぼれる快走路となった。
陽春に誘われて、、、まさしくそんな言葉が似合う日の始まりである。
◆林道大名栗線
家を出てちょうど1時間でラジウム温泉大松閣の脇を通り抜けた。
このすぐ先から総延長24kmに及ぶ大名栗線が始まるが、
木々に囲まれた中、ダートの路面は少々荒れ気味によって挙動が大きくなる印象だ。
視野に空の占める割合が大きくなる従って路面は落ち着き、気持ちには余裕が出てくる。
いつの間にか集落が遥か下に位置し、肌に当たる空気の質も少し違う気がしてきた。
さすがにこの辺りまで登ってくると桜の雰囲気を楽しむにはまだ先のようで、
空を背景した枝のシルエットに満開時の姿を想像しながら進んだ。
路肩にしっかりとした柵が設けられた辺りは登山道が横切っている場所でもあり、
流れ落ちる湧き水を楽しみながら小休憩を取れるようになっている。
我々もここで車を停めてしばらく休憩をする。
存在感ある大木の傍らを流れる春先の水に手を浸す。心まで洗われるような冷たさだ。
子供たちも普段遊んでいる世界とは違う雰囲気の中ではしゃいでいる。
おかげで少々休憩の時間を取り過ぎたようだ。時計に目をやると時間は11:00過ぎ。
テーブルと椅子を広げることができる場所なので此処で早めのお昼を取ることにした。
お昼を楽しんでいる間、いくつもの登山グループが足を止めて気軽に声を掛けてくれる。
その一度きりのコミュニケーションが妙に嬉しい。
休憩を終えて進むその先では雄大な景色を楽しむことができた。
都心から比較的アクセスしやすい場所でこのような世界を楽しめるのは素晴らしい。
深い谷を挟んだ対面の山腹にも延々と連なる林道の姿が確認され、
真横に通り抜けるその様子はさながら万里の長城であった。
それにしても空が近い。青空のおかげで一層の爽快感がある。
ただ、この林道は小さな崩落が多いので注意が必要でもある。
今回は支障がなかったが、何箇所か大きな岩が路面に鎮座して慎重に進む場面もあった。
気が付けば緩やかな勾配を下りはじめていた。
整備されているところと崩落の痕跡が相互に繰り返される路面を進む。
何年か先にはここも舗装されてしまうのだろうが、
貴重な長距離ダートの雰囲気を今のうちに楽しんでおこう。
途中、新しい命を宿らせているバッコヤナギと思われる樹木が目に留まる。
緑色の少ない崖沿いでその存在は目立っていた。
ほどなくして有馬線との分岐が見えてきた。
◆林道有馬線
分岐点では大名栗線が続く直進路は予想に反して開けられていたが、
今回は有馬線に入線すべく右に進路を取った。
ここからは急勾配の坂を下る。約2kmほどのダートだ。
幅員も狭く、両側から迫り出した樹木のおかげで覆われた感のある林道であるが、
そのせいかカーブミラーに映る青空の美しさが際立って見えた。
雨風の浸食によって荒れ気味の状態が続いて車の挙動が大きくなるが
車内ではそのリズムに合わせる子供たちの笑い声が響いていた。
勾配が緩やかになると同時に路面も広くなってきた。
一気に下ってきた感があるので、ひと息入れるために車を停めて少々休むことにした。
改めて周囲を見回すと少し寂しさがあるが、木々には新芽が顔を出している。
この辺りが新緑で賑わう頃はどのような雰囲気になるのだろうか。
それを確めるために、時間を作ってまた訪れてみよう。
さぁ、舗装路までもうすぐ。
土の感触を大切にしながら陽だまりのダート部分を楽しんだ。
◆飯能方面へ
有馬渓谷〜名栗湖の景観ポイントを通過してr53に出た。
付近の林道炭谷入線や人見入線の様子も見たかったところであるが、
時間は13:00過ぎということもあり、朝走ってきたr70を戻ることにする。
約30分後、飯能市の阿須運動公園で車を降りていた。
子供たちとの約束通り、遊具施設のある場所に立ち寄ったのだ。
それから暫く、親の存在をすっかり忘れたかのように自由に遊びまくっていた。
道路を挟んだ向かいにはあけぼの公園があり、その敷地内にはムーミン谷がある。
わざわざ遠くから出向くほどではないと思われるが、
小さな子供にとっては遊べる場所で、無料で十分楽しめるのがありがたい。
お弁当持参でのんびり過ごすには良いだろう。
さて、時間は17時前。早めの昼飯だったせいかお腹は正直である。
そろそろ、晩飯のことが気になりだした。
帰り道の方向には少し離れた先に「古都」があるが、今回は遠回りして帰ることにした。
◆日高方面へ(むささび亭)
高麗駅と鹿台橋を結ぶ道路沿いに停車している「むささび亭」にやってきた。
ここは以前から気になっていたカレー屋である。
特別目立つような看板があるわけでないので、外観からはカレー屋には思えないが、
実際に横田基地で使用されていたアメリカンなボンネットバスを改良した店内は
ウッド調でまとめられ雰囲気が良い。
時間が早いため、他に客はおらず我が家だけの専用バスとなった。
ちなみに、この店の営業日は金、土、日の週末だけである。
学生時代に本場コックが作るインド料理店でアルバイトしていた私にとって、
カレーにはそれなりのこだわりを持っている。そして、嫁も無類のカレー好き。
注文したのはチキンカレー(1,155円)とナンセット(1,575円)x2。
チキンカレーは5段階の辛さを選べるが、今回は2段階目(いわゆる中辛)。
なるほど、確かに美味しいし、好みの味であった。
ナンセットに付くカレーはドライ風味のタイプと豆カレー。
こちらは辛くないので子供たちも喜んでいた。
特にナンセットに付くドライ風味のカレーは美味しかった。
少々癖はあるのだが、上に書いた学生時代に覚えた味を懐かしく思い出した。
◆帰り道
店の外は薄暮。プル式のスモールライトを付けて発進する。
市街地に向かうにつれて少し混んできたようだ。
しばらくは子供たちの明るい話し声が聞こえていたが、
赤信号で止まった際に見てみると、いつの間にかすっかり熟睡モード。
ラジオのボリュームを落とし、その寝顔に小さな幸せを実感する。
信号が青に変わっても帰り道を急ぐ必要はない。
ハンドルを軽く握り直し、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ・・・
あれが舗装になったらロードでなんて考えるのは不謹慎かもしれませんね。
むささび停、昔食べましたが今も健在ですかね。
バスはあるみたいですが。
記事のすべてが懐かしいです。
このシリーズ最高です。
大名栗林道に関しては貴重な山岳ダートなのであのまま残ってもらいたいものです。
むささび亭は先週の土曜日にも前を通りましたが、時間が早くて開店前でした。
「ナンセットですか?」
「4セットです」
って感じだったんでしょうか・・・
# 元ネタ@京都のおみやげ屋さんにて
「これください」
「“おたべ”ですか?」
「いいえ、持ち帰りです」
近場でこんなところがあるとは思いませんでした。
今度チビ達と行ってみようと思います。
あのバスは巾着田にBBQに行くたびに気になっていたんです。カレー屋さんだったとは・・・
カレーグルメなきーじぇいさんが美味しいと言うならば、行かねば・・・
座布団2枚!!・・・と思ったけど、やっぱヤメた。
>ケンさん
きっと、お子さんたちは喜びますよ。
ムーミン屋敷以外にも幾つか建物があって図書や玩具を楽しめる場所もあります。
>シャウラさん
インドカレーなので私の好みでしたし、雰囲気もプラスアルファで気に入ったお店です。
辛さは3以上になると相当みたいです(私は2でちょうど良かった記憶が・・・)。